初回点検とドライブトレインのクリーニング&注油

皆様こんばんは。先ほど書いたブログの車体と同じNEILPRYDE NAZAREを初回点検とドライブトレインのクリーニング&注油でお預かり。

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さて、先日チェーンのお話というブログ、大変反響がありました。

新品チェーンについているベタベタオイル。暫く乗って頂きましたので、これで準備万端。

しっかりとクリーニングして、適切なオイルを塗布します。

 

 

さて、使用するのはこちらのチェーンマシンとディグリーザー。

ユーザー様の評判もとても良いのでお勧めです。そう、チェーンマシンやディグリーザーもすべて一緒ではありません。

特にディグリーザー、使用方法などを間違えると面倒なことになる事も。(この辺を話すと本当に長くなりますので割愛)

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まず、クリーニング前のチェーンの状態がこちら。(メンテナンスをしていないのではありません。この状態でしばらく乗ってくださいとお伝えしてこの状態です♪)

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メンテナンススタンドに載せて、フロントギアをアウターに入れます。

これでチェーンマシンでのクリーニングがやりやすくなります♪

(ちなみに、全体を洗車するときも汚れがひどい場合にはチェーンマシンを併用します。)

 

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チェーンマシンを装着。プーリーに引っかかるようになっていますが、一応左手でチェーンマシン本体を支えながら、右手でクランクを逆回転します。

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汚れの状態にもよりますが、こういった新品チェーンについているオイルを落とす場合は

ディグリーザーでのクリーニング×2回

そして

水を入れてのリンス×2回

 

をやり、拭き取るときにウェスに何も汚れが付かない状態にします。

水を入れてのリンスにもコツがあるので、気になる方は是非お尋ねください♪

 

 

ちなみに、この工程に入る前に。リアホイールを外した段階でスプロケにディグリーザーを塗っておきます。

 

そしてチェーンの洗浄が終わりコンプレッサーでエアーを飛ばした後少し乾燥させている間に、スプロケをクリーニングします。

以前お伝えしたPEDROSのブラシを使用して、スプロケの間・隙間などの汚れをしっかりかき出して、その後ウェスで一枚ずつ拭いていきます。

このやり方でやれば、スプロケを毎回外さなくてもかなり綺麗になります。

*この時ディグリーザーがリムやタイヤなどについてしまった場合はすぐに拭き取りましょう*

 

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完了です。

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このあと撮影を忘れてしまったのですが、オプションでTeam SKyルブを塗りました。

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フィーリングがかなり変わるはずです♪

 

それではまた

チェーンのお話

最近よくお客様から質問を頂くネタを

 

「新品のチェーンに元々塗られているグリスのようなベトベトオイル、これって落とすの?」

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良くある意見として

・これは保管用のオイル。粘度が高すぎるからすぐに汚れを拾ってしまうので、落とした方が良い

・いやいや、工場で塗られたオイルなので、逆に暫く放っておいても大丈夫な素晴らしいオイル

 

それぞれどこを軸に何を重視するかによって答えは変わってきますが、Cycle Daysでは特別ご要望が無い限り、基本的にロードバイク・MTB

クロスバイク問わず

 

新品チェーンについたオイルは落とさずにそのまましばらく乗って頂いています。

 

 

まず、そもそも新品チェーンについているオイルは通常のチェーンオイル、ルブとは目的が異なります。

もちろんベタベタしているとはいえ潤滑性能は持っていますし、よく言われている「長期保管用のオイルだから」という意味ももちろんありますが、もう一つ大切な役割があります!

 

『新品のオイルは落とさないで乗ってください』

何年前かのSHIMANOのテックセミナーで黒川さん(業界で知らない人はいないシマノのトップメカニックさんです)が仰っていたのですが、新品チェーンは、新しい工業製品特有の微細なバリなどがあり、それを保護するために包み込んでいるのが新品チェーンに塗布されているあのベタベタのオイルだそうです。

安易に落としてサラサラのオイルを塗ってしまうと、こういったバリなどがプレートやピンなどお互いに攻撃しあって、チェーン自体の寿命を著しく低下させてしまうようです。

ちなみにこのオイル、パーツクリーナーなどで脱脂したくらいじゃ落ちません。なので表面だけ少し脱脂して、内部にはオイルが残るようにすれば、汚れのリスクも最小限になり内部を摩耗させることも無いという事になるかもしれませんが。

ただ、何か特別なご要望が無い限り、当店ではそのままの状態で一か月ほど、300~500kmほど乗って頂き、状態を見て洗浄・注油を実施します。

専用のディグリーザーとチェーンマシンを使ってもかなり落とすのに苦労します。それでしっかりクリーン&ドライになったチェーンに用途になったオイルを塗った後のパフォーマンスは最高です!!(スプロケ、チェーンリング、プーリー、ディレーラーも同時に実施します)

 

メンテナンス頻度が高くない普段使い用のMTB,クロスバイクなどではご使用用途などによりそのままで使っている方もいらっしゃいます。

ただ、本来の性能を発揮するには、まずは一定期間保護用のオイルをまとったまま乗って、その後しっかりと洗浄して用途に合ったオイルを注油するというのがベストでしょう。

※大事な記述を忘れていました!

・まず、何事も例外があること。

・そしてシマノの新型SILTECチェーンなど 表面コートがされていたり、元々軽めのオイルが塗られているものがありますのでそういった場合はまた少し違ってきます。表面精度とコーティングにより新品でも削れ合うリスクが殆ど無いのかもしれません。(実証していませんが)

 

スプロケやチェーンリングを交換した直後も馴染みが出るまでは微妙に変速が落ち着かなかったりしますよね?

馴染みだしというのはとても大切なプロセスなのです。

 

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ちなみにレース現場で時々迷うのが

レース直前でチェーンを変えなければいけない場合。レースのような高負荷がかかる状態に、保護オイルのないチェーンオイルで挑むと寿命が縮むだけでなく大きなダメージ、最悪チェーン切れに繋がる事もあるとか。

 

そのレースは狙うレースなのか、それとも翌週以降の為の調整レースなのかによっても変わります。

ヒルクライムレースで、「このレースの為に一年練習してきた!!」という方の場合は、洗浄して少し油膜の残るような性質のオイルを塗ります。

逆に、「翌週のレースが本番なんだよ」という方の場合は、過剰なオイルを取り除いてそのまま乗って頂くか、本当に判断が分かれますね。

 

 

洗浄方法や注油方法、またどんなケミカルを使用するのかについては本当に奥が深いので、また別の機会に♪

お店の方でご質問頂ければとことんご説明いたします!!!(^v^)

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チェーン切れの危険性と 適切な変速について

以前Facebookページ上でもお伝えしたこのトピック。

先日メンテナンスをしたロードバイクでも同じような事象が発見されましたので、再度お伝えしようと思います。

【チェーン切れの危険と適切な変速について】

今回お伝えするのはたった一度、無理な変速をしたことによって起こったチェーンの不具合についてです。

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写真は
「漕いでいると後ろのギア付近からチャリチャリと小さな音がする気がする」
と持ち込まれたものです。チェーンのインナープレートが曲がってしまっており、これが隣のギアに接触して異音が発生していたようです。

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聞き取りをしたところ
この自転車をお友達に貸してサイクリングに出かけた時の事
借りた方がダンシング(立ちこぎ)でスピードを出していく途中、強い踏力を加えたままフロントをインナーからアウターに変えた時に発生したと思われます。
変速の瞬間は「パキパキ!」という通常の変速から比べるととても嫌な音がするのですが、経験のない方は意外とこれを無視して乗ってしまいます。

そしてこのまま乗り続けるといずれチェーン切れをしてしまう可能性が高いのです。

 

アフリカの青少年チームでマネージャー兼メカニックをしていた時、あまりにもチェーン切れが多かったので、選手たちと一緒にトレーニングに出ました。

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そこで判明したのが、ナミビアではナショナルチームに所属しているレベルを除き、実に多くの選手たちがチェーンに負荷のかかるギア選びとシフティングをしていました。

・スプリントをしながらフロントの変速操作をする
・インナーハイ(いわゆるたすき掛けの状態)で長く、負荷をかけて乗っている

 

など。

ペダルを一定の踏力で踏んでいる時は良いのですが、瞬間的に強く力を加えたときに変速をすると、チェーンに強いテンションが(縦の力)加わっている時に変速器がチェーンを押す(横の力)を事になり、チェーンや変速機の変形、最悪の場合その場で破断してしまう可能性もあるのです。

想像してみてください。加速しようと強く踏み込んだ瞬間にチェーンが切れたら。。。

簡単に言うと、立ち漕ぎ・キツイ上り坂での変速には注意が必要なのです。(特にフロント!)

坂の勾配を見ながら、早め早めに変速をしていく事が重要です。
加速の時も戦略的にギア選びをしていく事が大切ですね。

 

選手たちにそれを伝えてからは格段にチェーン切れが減りました。

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また、クリーニングと注油が適切に行われていない場合もチェーンの寿命を削ります。

当然ながら汚れたまま、もしくはオイルが無い状態ではチェーンのリンク・プレートが擦れあい摩耗しやすくなってしまいます。

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ネット上などで「チェーン切れ 原因」などと検索すると

「取り付けをした店舗か、製品自体に問題がある」
「いくら変速が悪くても一カ月で切れるのはおかしい」

 

という投稿やコメントを見かけます。そしてもちろんその可能性もあります。

ただ上述したように実は操作方法やメンテナンスが原因の事もあるのです。

いずれにしても良く観察すればどこかに原因を推察できるような痕跡があるもの。

私たちメカニックの役目として、それを冷静に判断し、明確にしてわかりやすく説明をし、今後ユーザーさんが同じトラブルに見舞われないようにする事が大事ですね。

 

自転車は素晴らしい乗り物、スポーツですが

命を落とすことも、命を奪う事もある乗り物です。

今一度、操作とメンテナンスについておさらいして、これからのサイクリングライフを楽しみましょう。

 

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『自転車のある日常に 安全と安心を』
サイクルホームドクター
Cycle Days